家族の問題に悩むM.Yさん

今から十数年前、私は底なし沼に身体半分がはまり込み、身動きできない状態でした。問題行動を起こす長女を何とかしようとし、出来ないと夫から怒鳴られ、怒鳴られないためにさらに長女に圧力をかける、そんなことの繰り返しが何年も続いていたのです。外では普通に仕事をし、よき母、妻を演じていても、家庭内はまさに戦闘状態でした。そんな日々への忍耐と苦痛に耐え切れなくなった時、公的機関から紹介された民間の相談室で、檜原先生のカウンセリングを受けることになりました。

毎回、堂々巡りになる私の話に、先生は根気よく耳を傾けてくださいました。初めの頃は、先生から、私がどうしたいのかを聞かれても、「自分がどうしたいのか」、という答えより「家族をどうにかしたい」という願望が優先され、自分の本当の感情や欲求に焦点を当てることができませんでした。それどころが、自分がしたいことなど考えたこともなく、問いかけの意味さえ分からない有様でした。先生が指示を出してくれればもっと楽になるのにと何度思ったことか。

カウンセリングが進むにつれ、問題の焦点は長女や夫のことだけではなく、自分自身に向かい始めました。それはとてもつらい過程でした。私が物心ついた時から感じていた私自身の生きづらさ、心の奥底に抱える寂しさ、自分や原家族に対する極度の羞恥心や恨みの感情などと真っ向から対峙することになったからです。トラウマによる自分自身の問題に気づいた時から、本当の私のカウンセリングが始まった気がします。

私は心から自分が変わりたいと思いました。カウンセリングを通して自覚した共依存やACから回復したいと願うようになりました。ようやく「私がどうしたいのか」を意識できるようになったのでした。始めは「若くもないし、何十年も自分の信念で生きてきた私の回復などあるのだろうか」と、先が見えない不安から絶望感にとらわれることもありました。その度に「願っていれば必ずかなうから」「回復は一人だけでするんじゃないのだから」と励ましてくださった先生の言葉にどれほど救われたか分かりません。

現在、私は怒号が渦巻いていた家を出て、一人で静かに暮らしています。人間が生きるためには、安全で安心できる環境が最も大切なことを実感しています。そのような環境を相談室で体験したからこそ、自らの選択でこの穏やかな暮らしを得ることが出来たのだと思っています。私の未来は自分で選択できること、選択したことは私が責任を持つことを先生とのカウンセリングで気づくことができました。

今では、生きづらさの原因の一つであった人との距離が適度に取れるようになり、人の目が怖くて自分を強固な鎧で固めることが少なくなりました。もっと早く、こんなに楽な生き方が出来ることを知っていれば私の人生は随分変わっただろうと思うこともありますが、過去があって自分が変われることを知り、今の私がいることを認めることが大事だと感じています。かけがえのない子供たちの存在にも感謝出来るようになりました。

支えてくれる人がいるからこそ10年の年月をかけて自分を変えることが出来ました。変化することを怖れず、これからも変わっていくだろう自分自身を信じて、後半の人生を歩いていこうと思います。