集中内観体験記~自分の内面と向き合い、受け入れる~

親子関係と共依存からの回復

1 はじめに~自分が内観をするに至った背景等~

 今回、檜原先生からの薦めで私が体験した「内観(集中内観)」の感想と、内観を通じて自分の中で生じた大小様々な心境等の変化についてご紹介したいと思うのですが、その前に、自分のバックグラウンドや、これまで抱えてきた内面の課題について少し触れさせていただきたいと思います。(その方が、内観したことによる自分へのインパクトを多少イメージしやすくなるかと思われましたので。)

 私は、幼少時からの両親の不和と、母親との共依存関係により、思春期を迎えたあたりから、漠たる生きづらさ、自分への違和感、不満や劣等感を強く感じるようになりました。
 また、特に社会人になってから、業務や職場の対人関係で過度に不安やストレスを感じてしまうことを理由に、数年に1度のペースでうつや適応障害による休職を繰り返すようになってしまいました。そんな中、当時の主治医の先生から紹介されたのが檜原先生でした。

 その後、檜原先生がセコイアを開室されて以降も、私は長らく檜原先生のカウンセリングのお世話になってきました。檜原先生からの目からウロコの(時に耳の痛い)指摘や暖かいアドバイスのおかげで、歪んだ親子関係を何とか清算し、母親と一定の距離を置くことができるようになりました。当初の状態からは想像できないほど、私は自分の人生を歩めていると実感しており、そのことはとても嬉しく思っています。

 しかしながら、やはり自分の根っこの部分にある生来の考え方のクセ(特に自己受容できず、承認欲求が強い点)からは、完全に抜けきるまでには至りませんでした。その結果、新型コロナ禍によるストレスや異動先での対人ストレスも伴い、昨年秋から適応障害を再発させ、休職してしまいました。

 その後、数ヶ月で体調を立て直し、復職準備をしながら、「今度こそ自分の考え方のクセを塗り替えよう!」と自分の内面の課題について、心理学や仏教関連の色々な書物を読みつつ整理するなど、自分なりに努力しました。しかし、頭の中でいくら考えても心がついていってないような感覚が拭えず、このまま復職することへの恐れや心配が常に頭に付きまとう状況が続きました。

 そして、いよいよ休職期限が徐々に迫る中、檜原先生とのカウンセリングで自分のそんな苦しい胸の内を吐き出したところ、「(自分の)内面と向き合うということであれば、ぜひ取り組んでみてほしいことがある」と先生から紹介されたのが、「内観法」という心理療法でした。

 檜原先生の説明によれば、内観法とは、インターネットやテレビなど外部からの情報が遮断された特殊な環境下で、屏風に仕切られた畳半畳程度のスペースに早朝から夜まで終始身を置き、自分の肉親(特に母親)、兄弟、妻や子などこれまでの自分の人生で関わりの深い人々について、①していただいたこと、②逆に自分がお返ししたこと、③迷惑をかけたことの3点について、時系列でひたすら振り返るというものとのことでした。
 そして、檜原先生から、ご自身の知人に内観法を専門に扱う研修所を開いている方がいらっしゃるとのことで、1週間泊まり込みで内観に没頭する「集中内観」に取り組んでみてはどうかと提案いただきました。

 先生から話を伺った当初、私は、過去を振り返り、自分を見つめることでなにか良いヒントが得られるのでは?という漠たる期待を抱きました。しかしながら、紹介された研修所のウェブサイトに掲載されていた内観体験者の体験談を読んでいるうちに、その期待感を上回る強い不安と迷う気持ちに苛まれはじめました。

 それらの体験談には、母親への心からの謝罪と感謝を述べるものが少なからずあったのですが、私は、先に述べたとおり、これまで特に母親に対して強いわだかまりを抱き、色々な苦しみを乗り越えて距離を置くに至ったのです。そんな自分が内観をすれば、むしろ逆効果となり、精神状態も悪化するのではないか、という考えを抑えることが当時の自分にはできませんでした。

 居ても立っても居られなくなった私は、檜原先生にメールでそんな自分の迷いを打ち明けたところ、先生は、「内観は、自分自身と向き合う療法。始める前から答えを探さずリラックスして取り組んだらどうか」と私の背中をそっと押してくれました。この一言で吹っ切れた自分は、紹介された研修所にて、集中内観に取り組むことを決心しました。


2.集中内観の感想

 日曜午後に研修所に到着し、所長さん(檜原先生にご紹介いただいた方です)から内観の仕方や日々の過ごし方について1時間程度レクチャーを受けた後、早速屛風の中でひたすら内観に励む日々が始まりました。

 屛風の中で過ごすことについて、最初は落ち着かない感覚が少なからずありましたが、自分の場合はすぐに慣れることができました。外部の情報から途絶されたことも手伝って、むしろ徐々に安心感さえ抱くようになったと記憶しています。

 また、3度の食事も屛風の中で頂くのですが、手作りの毎回献立の違う美味しい食事を頂けたおかげで、長時間屏風の中に籠もることに対する辛さは、あまり感じませんでした。

 しかし、肝心の内観については、自分が懸念していたとおり、母親へのわだかまり、むしろ迷惑を自分はたくさんかけられたという考えに凝り固まっていたため、最初はなかなかはかどりませんでした。私は母の内観を一通り終えるのに丸2日間以上を費やしましたが、しばらく思い出さずに済んでいた昔の辛い記憶ばかり頭によぎり、もどかしく、苦しい時間が続いたと記憶しています。

 ところが、3日目の午後から父への内観を始めたところ、突然幼少時の父にお世話になった記憶が次々蘇るとともに、そのことについて何の感謝や恩返しのできていない自分にはたと気づきました。そして突然ぽろぽろと自分の目から涙が湧き出してきたのです。
 
 前触れ無く突然訪れた自分の内面の変化に私は正直驚き、戸惑いつつ、自然に相手への感謝や謝罪の気持ちが心に芽生えることについて、安らぎを感じられるようになりました。
 これが自分の中で内観が少し深まったと感じた最初の端緒でした。

 また、4日目の午前中に、所長さんと個別に面談する機会をいただいたことが自分の内観が深まった第2の端緒でした。
 面談の中で、所長さんから適切なアドバイスを色々いただけたおかげで、色々な心のわだかまりがだいぶ解け、頭で理解していたはずの内観のやり方についてようやく腑に落ちた感じがしました。そして、徐々に相手へのストレスを抱くことなく、内観に取り組めるようになりました。

 そして、第3の端緒として、個人的に特に有効だったのが、父、妻への内観がひととおり終わったあと、5日目から6日目にかけて「嘘と盗み」についての内観に取り組んだことです。
 この内観は、通常のものとは異なり、自分が他者との関係でついてきた「嘘」や、犯してきた「盗み」(例えば無断で相手の筆記用具を使った、友達から借りた本をずっと返さずにいたなどといったことを含む)を年代別に思い出すというものでした。

 時間があまりなかったこともあり、今振り返るととても粗い内観だったと思うのですが、それでも私は、これまでの人生でいかに上辺を取り繕いつつ、嘘や盗みを繰り返してきたかを実感し、まさにその事実への恐ろしさに軽く震えるような心持ちになりました。そして、そんな過去の記憶と向き合う中で、そのような自分もまた自分である、という心境に至ったとき、(これもうまく理屈では説明できないのですが)「あ、今、本当の意味での自己受容ができたんだ」、そんな感覚を抱きました。これまで生きてきて正直経験したことのない感覚でした。

 その後、残り1日程度の時間で、再度母に対する内観を行ったのですが、集中内観を始めた当初と比較して、母に対するネガティブな気持ちがだいぶ減り、母への感謝や色々苦労をかけた思い出などを素直に思い出せるようになりました。

 そして土曜の昼に集中内観を終えて、屏風の外に出たとき、ここ数年あまり感じた記憶のない穏やかな気分とともに、復職への焦りや恐れの感情がほとんどない、とてもさわやかな心持ちでいる自分がいました。

 今回集中内観に真摯に取り組んだ結果、本当の意味で前向きな気持ちになれた気がして、とても嬉しかったです。そして、今回内観療法と出会うきっかけをいただいた檜原先生に心から感謝しています。


3.集中内観を終えて、その後の近況

 集中内観を終えた直後に感じた爽快感や高揚感は、その後徐々に落ち着いていき、今は集中内観をした日々がはるか昔の出来事のようにさえ感じてしまう自分がいます。自分が根っこから変われたような気さえしていましたが、残念ながらそのような都合の良いことはなさそうです。油断すればすぐに生来の考え方のクセがむくむく頭をもたげ、予期不安や他者への承認欲求に囚われかけることは日々あります。

 しかしながら、内観時に掴みかけた「自己受容できた(かも)」というあの感覚や、他者への感謝の気持ちは決して幻ではなく、自分の内面に「何か」を植え付け、それはしっかり根付いていると確信しています。
そのお陰で、先に述べたように考え方のクセに囚われかけても、そのことにすぐ気づき、今この一瞬、目の前のことに集中しよう、と努めることで、うまく気持ちを切り替えられることも増えています。

 現在、自分は元の職場で徐々に仕事をこなしつつ、集中内観での気づきを一過性のものにしないよう、起床後20分程度の内観と、夕方以降の空き時間での一日の振り返りを日課として取り組んでいます。

 今のところまだまだ試行錯誤の状況ですが、まずは継続第一の精神で日課をコツコツと続けていきたいと思います。そして、自分の内面の「芽吹き」をより大きく成長させることができるよう、今この瞬間を大切にという心がけで、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。
2021年4月25日
by K.M.

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